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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活10年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2016.09.01

【第6回】鎌倉から鹿児島へ移住。九州唯一のジャンベ屋・Cheerfulmarkの桑水流真さん・好恵さん夫妻。


−−お仕事をされるうえでふたりが大切にしていることは?

ONとOFFを切り替えるっていうのが得意じゃないんだよね。毎日好きなことをしていたい」「実際、ONとOFFっていうのはないよね。いつも同じというか…」と話してくれたのは、九州唯一のジャンベ屋であり、世界の雑貨を取り扱うショップ“Cheerfulmark”のオーナー、桑水流真(まこと)さん・好恵さん夫妻。

大学時代に真さんが友人と一緒に始めたというのが古着屋。「大親友のタケちゃんと一緒にやってたの。当時は渋谷に“道売り”しに行ってたんだよ」と、真さん。そこでジャンベと出合ったという。「道売りしてたらジャンベを担いだセネガル人が来て、“日本でジャンベを売りたい。誰かいない?”って言うんだよ。おもしろそうだから俺が売るよって」。そこからジャンベといえば下北沢、ということでCheerfulmarkができた。

 

−−ジャンベの知識はあった?

「ないない。最初はジャンベの知識もないし、もちろん叩けない。だから表参道や下北の南口でジャンベを売りながら、叩ける人が来たら教えてもらってたんだよね」という。下北沢に店舗をかまえつつも、朝夕は道端でひたすらジャンベを叩いては売り、通りすがりの人に話しかけたり話しかけられたりしつつ、フェスがあると聞けば出かけて行ってジャンベを叩いては売った。「当時は今みたいに野外フェスがたくさんあるわけじゃないし、プライベートなレイブパーティーみたいな感じだったね。“やってるらしいよ”と聞けば夜通し車を走らせて全国のイベントをまわったんだよ」と真さん。ここにCheerfulmarkの原点がある。

 

−−結婚、出産、鎌倉へ移転。Cheerfulmarkの仕事の流儀とは?

「もともと革靴を作っていたんだけど、妊娠がわかって溶剤を使う靴作りができなくなってしまって。そこから自然と布に流れていったかな」というのは好恵さん。最初は娘のために作った抱っこ紐が好評で、それが商品になった。今では好恵さんのハンドメイド雑貨もCheerfulmarkの人気のアイテムである。ジャンベと世界の雑貨に、ハンドメイド雑貨…、結婚、出産を経てさらに軌道に乗ったCheerfulmarkは、下北沢の再開発を機に真さんの故郷でもある鎌倉へ。

「朝はサーフィンをして、ジャンベの皮張りをして、午後はまた皮張りをしてサーフィンをして。最高だったよ」と真さん。商材のセレクトや仕入れは真さん、値づけやウェブサイトの運営、商品の発送は好恵さん、と自然と担当わけもなされている。「実際にお客さんに会って対面でやりとりするのは、まこちゃん。私は店頭で接客もするけれど、ネット上で全国のお客さんとやりとりも。あまりビジネスライクにしたくなくて、ネットでも個人だからこそできる接客ってあると思うから」と好恵さんがいう通り、ひとつのジャンベを販売するのに2週間もかけてメールで詳細なやりとりをすることもあるという。ふたりの話を聞いていると、夫婦それぞれの個性が絶妙なバランスでCheerfulmarkをつくりあげているのがよくわかる。

 

−−鎌倉から鹿児島へ。移住のきっかけとは?

「2012年、きっかけは震災。Rターンだよ。ルーツのR。ルーツが鹿児島にあったから」と真さん。2013年3月に新たにお店をオープンさせるまでの間は、真さんが鎌倉と鹿児島を車で何往復もして引っ越しや片付けをしたそう。東京で生まれ育った好恵さんは「あのとき、まこちゃんは大変だったけれど、私は鹿児島で暮らすことにとくに不安はなかったかな」と頼もしい。変わったことといえば「海がちょっと遠いかな」と真さん。今年6月に鹿児島市内に移転オープンした店舗の2階にあるジャンベ工房には、サーフボードが2枚かけられている。いい波の情報が入れば、いつだって海に向かえるように。

アフリカの雑貨や好恵さんのハンドメイド作品などが並ぶ店内。色鮮やかなカゴはついつい目移りしてしまう。

アフリカの雑貨や好恵さんのハンドメイド作品などが並ぶ店内。色鮮やかなカゴはついつい目移りしてしまう。

2階の工房にはセネガルやギニア、マリなどのジャンベがずらり。ジャンベは皮張りやメンテナンスも依頼できる。

2階の工房にはセネガルやギニア、マリなどのジャンベがずらり。ジャンベは皮張りやメンテナンスも依頼できる。

外壁のCheerfulmarkの文字やクジラ、クマの絵は、実は私の夫〈詩と、サンドイッチ。〉が描かせていただいた。

外壁のCheerfulmarkの文字やクジラ、クマの絵は、実は私の夫〈詩と、サンドイッチ。〉が描かせていただいた。

−−仲間が集うCheerfulmark。その暮らしとは?

「もともと生まれ育った家が、週末になると人が集まる場所だったかな。あとは大学時代に旅の途中でたまたま立ち寄った、山中湖の陶芸工房ダヴィンチの一郎さんとの出会いが大きい。いきなり来た見ず知らずの大学生を泊めてくれて、翌日には団体客に“先生です!”って紹介したんだよ。本当にびっくりして。でもそこから俺、半年も住み込んだんだよね」と真さんは笑う。

真さんの周りにはいつも彼を慕う若者たちがいて、イベントへ出店するときに同行したり、しばらく自宅に泊まったりしている。真さんと一緒にいる間、彼らは仕事も遊びもともに過ごす。それについて好恵さんは「子どもたちにはいろんな人に出会って欲しいから、今の環境はいいかなと思ってる」という。そして「人ひとりと出会うたびに人生って一瞬でガラリと変わるんだよ」と真さんはつけ加えた。彼らの子どもたちの、素直で優しくて子どもらしい姿を見ていると、それが善い悪いでなく素晴らしいことなんだと理解できる。

 

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今年の夏で4回目を迎えた硫黄島ジャンベ・アフリカン合宿。日本全国から毎回50名ほどが参加しているそう。

今年の夏で4回目を迎えた硫黄島ジャンベ・アフリカン合宿。日本全国から毎回50名ほどが参加しているそう。

−−「いつも楽しそう!」って言われる?

「言われるね。けど、実際楽しいよ」と真さん。それはジャンベが人と人を結びつけてくれる楽器であることや、今の暮らしを〈Cheerfulmark=陽気〉の精神で生きているからだろう。今後について尋ねると、好恵さんは「流れるままに。できれば身軽にいたいかな」という。冒頭の“ONとOFFを切り替えず、毎日好きなことをしていたい”というのは、ある意味ではいつでもONであるし、いつでもOFFであることだ。現代社会においてそんなことが可能なのか、と思う人もいるかもしれない。だとしたらCheerfulmarkへ行って、ふたりに会うことをおすすめしたい。きっともっと違う自分の生き方を考えてしまうから。

“下ネタは誰も傷つけない”と明るい下ネタをよく話す真さんだが、「そのことは書かなくていいからね」と好恵さん。

“下ネタは誰も傷つけない”と明るい下ネタをよく話す真さんだが、「そのことは書かなくていいからね」と好恵さん。

▼店舗情報

Cheerfulmark(チアフルマーク)
鹿児島市武1-24-11
TEL 090-8568-9596
営業時間 11:00~19:00
定休日 月曜(イベント出店などの臨時休業あり)

http://cheerfulmark.com

取材・執筆
やましたよしみ

フリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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