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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活8年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2020.10.08

【第29回】西方海水浴で一年中オープンしている海の家「ミチヨ食堂」の女将・德永美千代さん。


親が子どもを抱いているように見える奇岩「人形岩」がある小さな海、薩摩川内市の西方海水浴場。2014年、この町にあらたな文化をもたらしたのが「ミチヨ食堂」である。今回は、満を持して「ミチヨ食堂」の女将、德永美千代さん(愛称・ミッチー)にご登場いただく。なぜ満を持してなのかと言えば、ここは私のホームグラウンドであるから。『てげてげ日和』vol.29は、全国のミチヨ食堂&ミッチーファンに捧ぐ!

ミチヨ食堂がある西方海水浴は、美しく小さな海で、ここは地元ではゴールド集落とも言われ、過疎化が進んだ町である。私はこの町に2013年に越してきたのだが、当時、飲食店は一軒もなく、主にすることと言えば、海辺の散歩であった。

あるとき、鹿児島市内の友人のお店で開催された個展に足を運ぶと、「試作のジャークチキンを持ってきたよ」と軒先でお肉を焼き始めた人がいた。今回の主人公『ミチヨ食堂』のミッチーである。ミッチーは四人の子どものお母さんで、かたわらにはいつも旦那さんの雄(ゆう)さんがいる(正確にはいつもではないのだけれど、そういうイメージがある)。

薩摩川内市の西方海水浴の入口近くにあるミチヨ食堂。

2014年6月、「“今年が家族みんなで過ごせる最後の夏かもしれない”と思ったことが開店のきっかけだった」とミッチー。この年、長女が高校三年、長男が中学三年で、翌年には就職や進学などで、ふたりが同時に家を出ていく可能性があった。「それまでパートをしていたけれど、結局、夏休みも仕事で子どもたちとゆっくり過ごすことができなかったし、さみしい思いをさせていたかもしれない。お店をしたら、家族でひと夏ずっと一緒にいられるからいいな」と考えたのだという。

ミッチーは「昔からお店やってみたいな、楽しそうだなと思っていたの。けれど、そのときはお店をすることの大変さなんて考えてなかった」と笑う。そうこうしていたらチアフルマークのまことさんが「海の家やりたいんだよね」と言い、「だったら西方(海水浴場)でやるが!」と話が盛り上がった。実は、西方海水浴場のある薩摩川内市西方町にはミッチーの両親が暮らしており、かつて海水浴がにぎやかだった時代、祖母が夏になると海の家を営んでいた。ミッチーには、幼き日に海の家を手伝った思い出がある。

食堂前で大笑いするミッチー。この笑顔を見たくて会いに来るお客さんが多い。

偶然にも西方海水浴場の入り口に空き物件があることがわかると、ミッチーは「私がやる!」と手を挙げた。頭の片隅には祖母が使っていた年代物のかき氷機の存在があった。「あの、ばあちゃんのかき氷機を復活させたい」、そんな風に思っていたそう。メインメニューをジャマイカの郷土料理であるジャークチキンにしたのは、「新しくて楽しい味」と思ったことが理由。

2014年当時、鹿児島ではジャークチキンを食べられるお店がほとんどなかった。ミッチーは「周りにはオーガニック食材を使ったおいしくて身体にやさしい料理をつくる友達もたくさんいて。だったら私は“おいしいけれどジャンク”担当でいいかなってジャークチキンにしたの。人間ってときどきジャンクフードを食べたくなるじゃない?」と自ら笑って“ジャンク担当”だと話した。そういえば、雄さんが“邪悪チキン”とプリントされたTシャツをよく着ている。そういうことだったのか、と妙に納得した。しかし、試作の段階からなるべく質の高い調味料を使ったり、本場の味を知っている人に試食してもらったりして、現在の味にたどりつくまでには試行錯誤を重ねた。

看板メニューのジャークチキン。そのほかにガパオライスも絶品で、あい盛りにすることも可能!

オープン前には仲間たちが集い建物をDIY。週末ごとに人が集い、お店ができあがっていく様子には、とにかくワクワクした。2014年、夏本番を目前に『ミチヨ食堂』がオープンすると、ミッチーの思い描いていた通り、長女と長男はもちろん、当時小学4年生の次男と、小学2年生の次女も海遊びとともにお店のお手伝いを楽しんでいた。この夏、とくに下の兄妹は真っ黒に日焼けした。現在、次男も次女もそれぞれ高校生と中学生になったが、私の印象はずっと夏休みの子どものまま。

あの夏から6年。『ミチヨ食堂』は、いまでは鹿児島の人気店となった。さまざまなイベントに招かれて出店し、店舗では全国からアーティストを招いて数えきれないほどのライブが行われてきた。「最初のころはイベントへの出店もこちらから申し込んでいたのだけど、だんだんと主催者の方から声をかけていただくようになって。本当にうれしいし、ありがたい。それに出店のときにジャークチキンを食べてくださったお客さんが“この間おいしかったから”とお店に来てくれるのもうれしい」とミッチーは話す。また、「お店を始めて家族や親戚との関係が密になったのはよかった。お店があることによって集まりやすくなったから。それに、お客さんにお店を知ってもらったり、会いに来てくれたりするのもお店があるからこそだと思う。人との出会いがなによりの財産だし、人との出会いで人生が変わる。それも、いい方向に変わる。だから私もできるだけ人のお店に足を運んで、会いに行く」。

かき氷のメニューの看板。5種類の味から選ぶことができる。

店休日に行われた今回の取材。ミッチーから話をうかがっていると、海に遊びに来た高校生のグループが「かき氷ありますか?」とやって来た。「あるよ。何味にする?」とミッチーは店休日にもかかわらず、気持ちよくかき氷をつくりはじめる。ふわっふわで大盛りのかき氷。「デカッ!」と驚く高校生に、ミッチーは「どっから来たの?」と声をかける。ミッチーはお店がどんなに忙しくても、お客さんとの会話を大切にする。

通常サイズが大盛りのかき氷。筆者の息子は、ミチヨ食堂のかき氷が普通だと思っている。

「ただつくって提供するだけってイヤなのね。出店で並んでもらう時間にも笑顔でいてもらえたらうれしいから、できるだけ声をかけるように心がけているかな」。ミッチーのホスピタリティやサービス精神は店内でも出店でも、いたるところに発揮されている。店内は子どもたちが遊べるおもちゃやスペースが用意され、小さな子どもがいる親にもやさしい環境が整えられている。

オープン当初から手入れをして、修理をして使っていた、あのばあちゃんのかき氷も役目を終え、いまは2台目が活躍している。この夏、コロナウイルス感染症の流行の影響により、開設されなかった西方海水浴だが、「ミチヨ食堂」のジャークチキンや大きなかき氷を求めるお客さんや、ミッチーに会いに来る人たちがあふれた。家族や友達やお客さん、人と人とのつながりを大切にするミッチーのお店「ミチヨ食堂」は、秋も、冬も、春も、海の家としてここにある。

情報解禁! なんとミチヨ食堂のジャークチキンがおうちで味わえるパックが登場。詳しくは、ミチヨ食堂までお問い合わせを。


海岸でインタビューに答えるミッチー(右)と、筆者(左)。

▼店舗情報ミチヨ食堂
薩摩川内市西方町1210-7
TEL 090-8919-5155
営業時間 [7~8月]11:00~17:00 / [9~6月]11:00~15:00
定休日 月曜
https://www.facebook.com/nishikatashokudo/
※出店などもありますので、遠方からお越しいただく際にはFacebookページをご確認いただくか、お電話にてお問い合わせください。
取材・執筆
やましたよしみフリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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