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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活10年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2017.02.02

【第11回】独断と偏見で語る! 鹿児島の焼酎文化。


「とりあえずビール!」とはお酒の席の常套句である。静岡県出身で東京での暮らしが長かった私も、20代は「お酒・飲み会=ビール」というほどのビール党であった。ところが、2011年に鹿児島へ移住すると、その考えは一変する。鹿児島では「お酒=焼酎」なのだ。今回の『てげてげ日和』では、私の独断と偏見をたっぷり含みながら鹿児島の焼酎文化について、あれこれ語るとする。

2杯目以降のビールはNG!?

移住当初、ある飲み会に誘われたときのことだ。私だけが県外出身者の場で、「とりあえずビール!」の感覚で迷うことなく生ビールを注文したら、初めて訪れたお店ながら同席していた人が焼酎のボトルをオーダーした。定例で集まるメンバーでもないのに、“ボトルでオーダーして余ってしまったらどうするんだろう?”という小さな不安…。しかしながら私の無粋な心配をよそに、メンバーは次々に焼酎を飲み続け、気がつけばボトルは2本目へと突入した。鹿児島では飲み会のスタートから終わりまで、一貫して焼酎を飲むことは特別なことではないようだ。ビールに始まり、焼酎、ワイン、日本酒、カクテルなど、いろいろなお酒をチャンポンする飲み会に親しんできたため、たったこれだけのことで驚いた。

そして、県外出身者同士が集うと“鹿児島あるある”としてよく話題になるのが、飲み会で2杯目以降に続けてビールを頼みにくいという話。居酒屋ではある程度の人数がいると焼酎のボトルを注文することが多いため、乾杯後にビールを飲み続けようものなら「え? またビール?」という空気になることも珍しくない。こちらとしてはあと2~3杯、なんならもう少しビールでいきたい、という気持ちでも、周囲の「焼酎を飲めばいいじゃない?」という雰囲気に耐えられず、焼酎に切り替えたことも数知れず。これには“とりあえず好きなだけビールを飲ませてください!”という思いが未だにある。

焼酎好きの県外出身者は県民に愛される!?

鹿児島で焼酎というと多くが芋焼酎を指す。(奄美大島では黒糖焼酎が愛飲されているようだ)。個人的には、馴染みがないころは芋焼酎に対して苦手意識があった。ところが、飲み始めると苦手だった香りも芳醇な香りやうま味にかわり、今ではいろいろな蔵元の焼酎を飲み比べするのも楽しみのひとつである。鹿児島で暮らし始めて「お酒が好きであること、お酒が飲める体質であること」がちょっとしたラッキーだったと思うこともしばしば。というのも、親戚のおじちゃん方、仕事関係のおじさま方は、県外出身者の私が焼酎を飲めると知るとそれだけで喜んでくれ、親しみをもって接してくれるのだった。はたまた、移住当初は言葉のアクセントの違いからよく観光客に間違われていたのだが、カウンターで飲んでいると隣りの席のおじさんが声をかけてくれ一杯ごちそうしてくれることも。「焼酎が飲める=男女問わずおじさんたちにかわいがってもらえる」、これも県外出身者同士が話す“鹿児島あるある”だ。

焼酎というと鹿児島では芋焼酎が定番とはいえ、米焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎など、さまざまな原料を使用したものがある。そして飲み方は、生(き)や水割り、お湯割り、ロック、お茶割り、ソーダ割りはもちろん、鹿児島ならではなのが焼酎を事前に水で割った「前割り」だ。前割りは数日間寝かせることで、焼酎と水がなじんでまろやかな味わいになる。これを沖縄から伝わったとされている“黒ぢょか”という酒器に入れ、火にかけて人肌程度に温めていただく。私はこの前割りを知ってから焼酎がより好きになった。アルコールの角がとれて口当たりが丸く、飲みやすいのだ。ただ、正直にいうと黒ぢょかを使っての前割りは飲んだことがない。一般家庭で黒ぢょかを使っているという話も聞いたことがない。黒ぢょかでいただく前割り、ちょっと憧れる。

とある大きめのスーパーの焼酎コーナー。

とある大きめのスーパーの焼酎コーナー。多数の銘柄がずらりと取り揃えられている。

鹿児島県内の焼酎蔵元数は100余りあり、その銘柄数は1000を越える。鹿児島で暮らしていると様々な場面で焼酎が鹿児島県民の暮らしに密接していて、焼酎文化が根づいていると感じる。それは友人宅を訪れるときやちょっとしたギフトとしてなど、年代を問わず手土産として焼酎を選ぶのがごく一般的なこと、新店舗がオープンするとお花とともに焼酎のボトルが並んでいることなどが挙げられる。それから、とくにおじさんたちは鹿児島の焼酎のなかでも、地元の蔵元の焼酎を好んで飲む。地元の銘菓はあくまで贈答品としての扱いなのに対し、愛飲する焼酎にかぎっては地元愛が溢れているのだ。

しょつづつみ

しょつづつみ

「てげてげ日和」第5回にご登場いただいた下池奈津子さんが手がける“しょつづつみ”。焼酎を手土産にする際など、スマートにボトルを包めるアイテム!

最後に、鹿児島弁では焼酎を飲む晩酌のことを「だれやめ/だいやめ」、飲み会のことを「飲ん方(のんかた)」、楽しい夜のことを「よか晩」という。今宵も鹿児島中でだれやめをしたり、飲ん方が開かれたり、ほろ酔いでよか晩を満喫する人たちがいるだろう。長々と綴ってきた私の独断と偏見による鹿児島の焼酎にまつわるコラム、“異論アリ!”という方がいらっしゃったら、ぜひ焼酎を酌み交わしながらよか晩を過ごしましょう!

取材・執筆
やましたよしみフリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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