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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活10年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2017.05.10

【第14回】人々を美しく導く。マール・ユナイテッド代表・ヘアメイクアップアーティスト・ヒラノマリナさんの行動原理。


美人で聡明、プロフェッショナルとして全国を飛び回る魅力的な女性ーー。数年前に一度会ったきり、その後はSNSでのみのつながりだった。“いつかゆっくりお話してみたい”、そう思っていた。今回、ご登場いただくのはヘアメイクアップアーティストでスキンケアブランド「MARapelar(マールアペラル)」を手がけるマール・ユナイテッドの代表・ヒラノマリナさん。彼女がヘアメイクアーティストになるまでや今のお仕事のこと、これからの活動についてお話をうかがった。イメージとは恐ろしい。私が勝手に抱いていた“ヒラノマリナ”という人のイメージは、この取材で完全にくつがえされたのだった。それはもう意外なエピソードの連続でジェットコースターにでも乗った気分!

特殊メイクに興味をもった高校時代。

彼女のプロフィールを読むと、高校卒業後、すぐに美容学校へ進学していることがわかる。ともすると10代から美容の分野へ興味をもち、しっかりと進路を決めていた人、と思う。将来のことなどまるで考えず“とりあえず”大学へ進学した若き日の自分を思い返しながら、それについて問うた。「いえいえ、高校生のときはヘアメイクという仕事があることすら知らなかったです。卒業すらも危うくて」と真顔で答えるヒラノさん。“おや? 卒業すら危ういとは?”。漠然と“真面目なお嬢様”と思い込んでいたのだが、しょっぱなから出鼻をくじかれる。

「高校時代はあまり真面目な方ではなかったんです。思春期だったからか、ずっとモヤモヤしたものを抱えていて。“耳を出してはいけない”という校則があったんですけど、それに反発して坊主のような髪型にしたこともありました」とマリナさん。“女子高生が坊主頭!?”、とまた驚く。ここはひとつ直球で、単刀直入に聞いてみた。「…もしかして、あの、不良だったんですか?」と。すると「う~ん。不良といえば不良だったかも」という。その回答は意外だった。今、目の前にいるしとやかで美しき女性が十数年前にちょっとした不良少女だったなんて…。ほかにも、ここに書くのがちょっぴり難しい思春期の高校生ならではの“ワル”なエピソードも。

凛とした強さと美しさを兼ね備えた大人の女性。かつてのエピソードとはほど遠く感じる。(画像提供/ヒラノマリナ)

凛とした強さと美しさを兼ね備えた大人の女性。かつてのエピソードとはほど遠く感じる。
(画像提供/ヒラノマリナ)

では、なぜ美容学校へ進学したのか。「特殊メイクに興味があったんです。『マスク』という映画を観て、特殊メイクっていうのがあるんだと知って。映画はもともと好きだったし、絵を描くことも好きでした。あとは“手に職をつけたらいいよ”という先生の言葉も残っていたかな。それに、なにより都会に出たかった」とマリナさんはいう。高校卒業は諸事情により延期されたものの、お母さんの献身的なケアもあり、無事に卒業すると都内の美容専門学校へ。

愛する母の言葉で気づいたこと。

「専門学校時代も遊んでいましたね。また卒業が危うい状況になって。でも2年生のときだったかな、ある事件があって毎日学校へ通うようになりました」とマリナさん。ある事件とは、移動教室の最中にクラスメイトのひとりの鞄からお金がなくなった、というもの。そしてその疑いを彼女がかけられた。「悔しくて母に電話したんです。すると母から“あなたの生活態度が悪いから疑われるのよ”と叱られた。そこでようやくハッとしたんです」。さすがに翌日は落ち込んで休んでしまったものの、その次の日から卒業するまで人が変わったかのように毎日学校へ通う。それは「お金を盗んでいないことを証明するため」だった。鼻につけていたピアスを外し、休日は補修にも参加した。美容師の免許も着付けの免許も一発で合格するまでに生活態度全般をあらためた。「あの出来事があって、母のひと言がなければ私は変わっていなかったかも」とマリナさんは話す。

卒業後は「特殊メイクを手がける事務所に所属しました」。けれど、見習い期間はお給料も少なく、それゆえ空いた時間はアルバイトにあて、それでも足りない部分は「知恵を絞って暮らすしかなかった」と彼女はいう。「自宅でバーのようなことをしたり、新宿のコマ劇場の前でレジャーシートを広げて“500円でメイクします!”なんてことをしたり。当時は大変だったけれど、おもしろかったですね」。

単身ニューヨークへ。夢と現実と。

三年半勤めた事務所を辞めてフリーランスのヘアメイクとして活動するようになると、暮らしも安定してくる。そして25歳のときに単身ニューヨークへ。しかし、聞けばこの渡米もまるで計画的だったとは言えないようだ。「子どものころから海外へは行きたいと思っていて。フリーになって少しずつ貯金ができてきたので、“地球の歩き方”のオフィスへ相談に行ったんです。最初はスペイン、そのあとはイタリア、イギリスと提案されて、時間が経つにつれて貯金もどんどん貯まってきて“これだけあればニューヨークへも行けますよ”という話になったんです。それでニューヨークに。だから初めから計画していたものではなかった。でも不思議なんですよね、卒業文集のようなものには“将来の夢、ニューヨークへ行く”と書いてあったんです」とマリナさんははにかんだように笑う。

今も鹿児島と東京を行き来する彼女の仕事は、いつも飛行機とともにある。

今も鹿児島と東京を行き来する彼女の仕事は、いつも飛行機とともにある。

渡米して2カ月後、強盗に遭う。口元を14針も縫う大怪我を負った。普通ならショックで帰国しそうなものだが、彼女は違った。「人に話すネタが増えたな、と思って。その後も恐怖心がまったくなかったわけではないけれど、それでも友達の家から毎日バイトへ通いつつ、紹介されたヘアメイクの仕事をしました。まさかニューヨークで仕事ができるなんて夢にも思わなかったですね」と飄々と語る。

マール・ユナイテッドは「人生を共にする“助け合い”のチーム」。

2009年、彼女は帰国すると、現在、代表を務める会社・マール・ユナイテッドを設立。「お金のない時代のシェアメイトたちとクリエイティブチームをつくって会社を立ち上げたんです。みんなが結婚して子どもが生まれてお母さんになっても仕事ができる、そんな女性の会社をつくりたいなと思っていて」と、マリナさん。それはただの会社ではなく、人生を共にする「助け合いのチーム」だという。

2012年には植物由来の原料と使用したスキンケアブランド・MARapelarを発売した。念願叶ってのことだろうか。とはいえ、メイクアップアーティストがメイクアイテムでなく“スキンケアアイテム”を手がけたのはなぜだろうか。それを尋ねると、「イベントのつながりで化粧品の工場の方と知り合って。最初にメイクアイテムをつくっている人と出会ったら、メイクアイテムをつくっていたでしょうね」とサラリと話す。彼女の行動原理はどこまでも“動く→考える→カタチになる”。とにかく行動ありき、ということがわかる。

鹿児島の豊かな自然が生み出した「月桃」と「どくだみ」を使用した美容液。

鹿児島の豊かな自然が生み出した「月桃」と「どくだみ」を使用した美容液。

亡き母へ贈る、カレンデュラをあしらったアイテム。

MARapelarが多くの女性に支持されているのには理由がある。「メイクアップアーティストとして“スキンケアアイテムは何を使っても一緒”という感覚があったんです。でも、無農薬原料やオーガニック原料を厳選して、植物やメディカルアロマの考えに基づいて天然精油をブレンドしたアイテムならストレスフリーの肌が目指せると思いました」。その考えにたどり着くまでには、彼女をいつも支え続けてくれた母の存在がある。「私が23歳のころから闘病していた母も、できるだけ自然なものでケアしていたんですね。そして仕事においても、根底には母がうれしいこと、喜ぶことをしたい、という気持ちがありました。昨年から企画していた新商品の“モイスチャライジング ハンド&ボディウォッシュ”も2月に母が亡くなる前日まで足を洗ったり、足湯をしたりして使っていたんです。私は母と一緒にできること、それをずっと探していたんですよね」。そう語る彼女の瞳にはうっすらと涙が…。

店頭へも足を運び、ていねいにアイテムを並べたり、掃除をしたりすることも。

店頭へも足を運び、ていねいにアイテムを並べたり、掃除をしたりすることも。

5月10日(水)に発売されたばかりの新商品。サンプルをバッグから取り出し見せてくれた。「パッケージには母の好きだったカレンデュラや野花をあしらいました。母が亡くなって、急きょ母の日を意識して5月10日に発売することを決めたので、最近はずっと忙しかったんですけど、目標があることで救われましたね。マール・ユナイテッドのチーム内でも“母への感謝の気持ちをカタチにすること”を共有できて、“何かを大切にすることでより想いがこもること”を実感しました。使ってくださる方にも、感謝の気持ち、やさしい気持ちとともに在れば、と願います」。

マリナさんのお母さんへの想いが詰まった新商品。

マリナさんのお母さんへの想いが詰まった新商品。

今年10月にはMARapelarは誕生から丸5年という節目を迎える。年内中にさらに新商品が発売される予定があったり、本社内にフェイシャル専門のサロンのオープンも控えていたり、彼女も会社も新たな展開をみせる。10代から自分自身に正直に行動し、自らの手で夢を叶えてきた彼女。今は亡き母への想いを抱えながら、今後も共鳴できる仲間とともに自らフィールドを広げ、挑戦し続けるのだろう。同世代の女性として等身大の彼女の姿に、エールと羨望のまなざしを送らずにはいられない。

世の中の女性たちを美しくする、そんな彼女もまた美しい。

世の中の女性たちを美しくする、そんな彼女もまた美しい。 世の中の女性たちを美しくする、そんな彼女もまた美しい。

▼ヒラノマリナ

1981年鹿児島生まれ。2000年、山野美容専門学校卒業後、ヘアメイクとして活動開始。2006年、渡米し、ニューヨークを拠点に雑誌や広告、コレクションなどを手がける。2009年、帰国後に株式会社マール・ユナイテッドを設立。2012年、スキンケアブランド・マールアペラルを発表。現在は、東京と鹿児島を行き来しながら、ヘアメイクアーティストとして活動するほか、各種イベントにて講師を務め、自らもイベントの企画・プロデュースなども行う。
Blog http://marinahirano.hatenablog.com

 

▼株式会社Mar United(マール・ユナイテッド)

東京都目黒区大橋2-24-1-401[本社]
鹿児島市西田1-7-1-1302
TEL・FAX 03-3410-5399[本社]
FAX 099-204-9455[鹿児島オフィス]
E-mail info@maruunited.com
HP https://marunited.com

取材・執筆
やましたよしみ

フリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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