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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活10年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2019.06.18

【第24回】鹿児島の暮らしとともにあるアパレルブランド「HiHiHi(ひひひ)」のデザイナー・末田昌士さん。

「これって“HiHiHi(ひひひ)”?」「そう。“HiHiHi”」。鹿児島発のアパレルブランド「HiHiHi」をめぐる、よくある会話例ーー。今回、『てげてげ日和』にご登場いただくのは、私の周りで愛用者が多い「HiHiHi」のデザイナー・末田昌士さん。なんと5人目の赤ちゃんが誕生したばかりのおめでたいムードのなか、お会いすることができた。

ふたりの子どもと夫(カメラマン)を連れ立って訪れた蒲生のアトリエ。末田さんは次男の春くん(4歳)と三男の青くん(2歳)とともに待っていてくれた。私たちが祝福を伝え、あいさつをしている間にはやくも春くんと息子(3歳)が遊び始める。寝起きの青くんが末田さんの膝のうえに座りながら取材開始だ。

蒲生のアトリエにて、青くんを気遣いながら取材に応える末田さん。

「家なし」から始まったブランド“HiHiHi”

文化服装学院デザイン専攻科を卒業後、アパレルメーカーに勤務し、退職後にネパールやインドで手仕事を学んだ末田さん。2008年、奥多摩でキャンプ生活をしていたときに立ち上げたのが“HiHiHi”だという。「姉の結婚式を機に帰国して、鹿児島から車で東京を目指していたんだよ。そして、たどり着いたのが東京都ながら自然豊かな土地・奥多摩。テントで生活しながらアトリエを探したんだけど、まあ寒かった。アトリエが見つかったのが12月。朝、濡れたタオルが凍ってたからね(笑)。“HiHiHi”は家なしから始まったブランドなんだよ」。

この奥多摩のアトリエでブランドをスタートすると、ほどなくして現在の奥様・友美子さんと結婚。さらに長男の天土(てんと)くんを授かる。「奥多摩のアトリエは2年くらい。子どもができたことで葉山に引っ越しをしたんだ。葉山には友達もたくさんいたし、おいしいパン屋さんもいっぱいあったから」と末田さん。ところが、おいしいパンを求めていたものの、生まれてきた天土くんがアレルギー体質であることが発覚し、それをきっかけに食生活を見直すことになったそう。「ほとんど食べられるものがなくて、まずはカタカナのメニューはやめた。食材や調味料もすべて見直して。暮らす環境もそうだけれど、食を考えることでそれ以外のいろいろなことも知って、深く考えるように変わっていった」と末田さんは話す。

わが家に保管されていた2011年の“HiHiHi”のカタログ。末田さんも若い!

暮らしの根底にある大切なことと、服づくりがリンク

もともと天然素材を使用した“HiHiHi”。それは「お風呂に入るとき以外の時間はずっと服と一緒だから着心地が大切」という考えのもとであったが、子どものことを考えたときに「暮らしの根底にある大事な部分が、服づくりともリンクした」という。そして、起こったのが東日本大震災である。服づくりとともに「家族でどういう暮らしをしていきたいか」と考えてきた末田さんは、2日後には故郷である鹿児島へ出発する。

鹿児島の“HiHiHi”の拠点となる蒲生のアトリエは、緑豊かな田園風景のなかにある。末田さんは、レディースのデザインやパターンを担当する友美子さんとともに、ここでサンプルづくりまでのすべての工程を行う。「最初は鹿児島でブランドをやっていけるか不安もあったけれど、鹿児島に来てみたらすごい作家やつくり手がたくさんいて、そういう人たちとの出会いがうれしいし、楽しい。帰って来てよかったという想いは年々増している」。

子どもたちからデザインのインスピレーションを得る

今年の4月に誕生した次女の絹ちゃんを含む5児の父でもある末田さん。2人の育児で手一杯の私からしたら“一体、いつインプットの時間があるのだろう?”と疑問が浮かぶ。末田さんは「窓越しに眺める自然が季節ごとに移ろう姿も日々、服づくりのヒントになる。あとは、子どもはそれぞれに興味があることが違うから遊びながらイメージが湧くことも多いよ。子どもの言葉はメッセージで、そこから発展していくこともある。子どもが多いからこそ得るインスピレーションも多い」と語る。実際に長女の八笑ちゃんが描いた色彩感覚豊かな絵が“HiHiHi”のプリントTシャツとしてリリースされると、多くの反響を得た。「八笑の絵をみんなが着てくれてるよ、なんて話しましたね」。シーズンを先へ先へと慌ただしいイメージのあるアパレル業界だが、彼の語り口はゆったりと穏やかであり、ひとりの父親として、クリエイターとして、どっしりと地に足がついているのがわかる。

踊りが大好きだという青くん。音楽をかけると得意のダンスを披露してくれた。

末田さんがブランドを運営するうえで大事にしていることは「自分らしく、正直にいること。感謝の気持ちを忘れないこと」。さらに「自分なりの芯はもちながら、柔軟でいたい」とも話す。環境の変化や時代の流れを感じながら、大切なことをいつも再確認して前に進むーー。「つくりたいものはたくさんあって、つくる必要があるものもあって。定番のアイテムもあれば、今のムードも表現していきたい。だからアイテムをギュッと絞るのが大変」という末田さん。最後に、今後の目標をうかがうと「大きくするよりも続けていくこと。自分の手の届く範囲で、目が届く範囲で」といたって堅実である。それは“HiHiHi”というブランドが、末田さんの生き方とともに、家族との暮らしとともにあることを意味するのだろう。

天然素材を使用した着心地のいい服、自然体でしなやかなやさしさを感じさせる末田さんーー。“HiHiHi”も末田さんご自身も本質がブレないのは、きっと家族の幸福のもとに成り立っているからではないのだろうか。だからこそ、袖を通したとき“HiHiHi”の服は気持ちがいい。今日もどこかで「これって“HiHiHi”?」「そう。“HiHiHi”」、こんな会話がなされているはず。

ひひひ 2019年 春夏物カタログより(撮影・松本直也/画像提供・HiHiHi)

▼店舗情報

classic(クラシック)

鹿児島県姶良市蒲生町北370-1
営業時間 11:00~17:00
定休日 火曜~木曜、日曜
HiHiHiのアイテムが並んでいたり、古道具や楽器、コーヒーが楽しめたりする「シックな暮らしを提案する」をテーマにしたお店。4つのお店のそれぞれの店主が週替わりで店番をしている。

classic Instagram
@classic_kamou

HiHiHi HP
http://hihihi.co

HiHiHi Instagram
@hihihi_kagoshima

取材・執筆
やましたよしみフリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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