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TEGE TEGE BIYORI てげてげ日和

大自然に恵まれ、豊かな食、
魅力的な人が集まる南国・鹿児島—。
「てげてげ日和」では、
鹿児島生活10年目のライター・
やましたよしみが、
鹿児島の素敵な人・モノ・風景などを
ご紹介します。

2018.08.09

【第18回】旅人から木工作家になった人。「WAGO Creation」のMONchさん。


しばらく産休&育休をいただいていた『てげてげ日和』。“ライター・やました、二児の母になって帰ってきました!”ということで、記念すべき復帰第一弾にご登場いただくのは、鹿児島市内に木工のアトリエ「WAGO Creation」のMONch(もんち)さん。前々から彼の人柄や作品のファンであったため、いつか取材をしたいと思っていたのがついに実現した。“木の温もり”とはよく使われる言葉だが、彼の繊細かつしなやかな木工作品はどのようにして生まれるのかーー。あらためてお話をうかがった。

MONchさん。古民家を改装したアトリエの前で。

MONchさん。古民家を改装したアトリエの前で。

サラリーマンから旅人へ。旅で出合った一枚の看板

夏の始まりを感じさせる日、「WAGO Creation」を訪れた。額に大粒の汗を浮かべて私を迎えてくれたのは木工作家・MONchさん。通り雨があがり、鮮やかなピンク色のサルスベリの花を背に「今、草刈りをしてたんだよ」とマイペースに話す。昨年、秋に構えたアトリエ内は、MONchさんが手がけた作品がずらりと並び、仕切りの奥には作業場がある。何度も面識のあるMONchさんだが、面と向かってじっくり話をするのは初めてだ。

なぜ木工の道に進んだのか、私はそれさえ知らない。まずは「WAGO Creation」を始めたきっかけをうかがう。「もともとは会社員だったんだよ。営業マンをしていて。でも向いてないなと思って、20代半ばで2年かけて日本中を旅して回ったんだよね。そのときに島根の出雲で手彫りの看板に出合ったんだけど、そのインパクトがすごくて。何屋の看板かは憶えていないんだけど。そして衝動のままにホームセンターで彫刻刀を買ってきて、その辺の木にイメージを彫ってみたんだ。そうしたら木を彫る、削る感触が好きだなと思って」ーー。これが今に続く木工作家の道の始まりだという。

アトリエ内の様子。三角に丸い穴のあいた箸置きは人気アイテム。

「眠くなるまで作業する」。木工作家のアトリエでの一日

「お師匠さんはいない」と言い、その後、専門書を手に取り、ほかの作家さんの作品を研究し、ときに偶然出会った木工作家さんからアドバイスを受けながら、試行錯誤を続ける。まさに独学だ。最初は天文館のバーで働きながら作品づくりをしていたが、気づけば周りの声に後押しされて木工の道、一本になっていったのだそう。MONchさんの柔らかな人当たりから考えると、彼を応援する人の数の多さもうなずける。職人でありながら職人気質という頑固なイメージとは真逆なのだ。

アトリエでの一日の流れについてMONchさんは「毎朝欠かさず地神様の碑にあいさつをするんだよね。それから、お茶を飲んで作業スタートかな。一応、営業時間は18時までなんだけど、ハマれば気が済むまで作業する。ときには眠くなるまで」と話す。淡々と作業に没頭する姿が容易に想像できた。律儀で真面目な性格は作品の輪郭に表れている。

(左)ライフスタイルショップ「Nuff」と有機野菜の販売やカフェを運営している「地球畑」とコラボした『ファーストスプーン』は、リングホルダーにも。(右)メガネホルダー。

(左)ライフスタイルショップ「Nuff」と有機野菜の販売やカフェを運営している「地球畑」とコラボした『ファーストスプーン』は、リングホルダーにも。(右)メガネホルダー。

作品へのこだわりに人柄が表れる。祈りにも似た想いとは?

作品づくりは、基本的に【デザイン→木をかたちに切り出す→(4段階かけて)やすりをかける→オイルを塗って仕上げる】の4工程。なかでも一番大切にしている工程は、やすりがけだという。「やすりをかけて木目が美しく露出してくるときに自然の営みを感じるんだよ。木は誰かの土地にあるものだけど、あくまでも自然のものだから。最後のやすりをかけているとき、作品に触れているときは愛でている感覚」。オイルで仕上げているときも、「どんな人が使ってくれるか、深く木目が出てくるときに考えながら作業している」という。また、一般的に木工作品などで使用されているウレタンではなく、オイルを仕上げに使うことにもこだわりがある。「オイル仕上げのものの方がお手入れは大変なんだけど、やっぱり自然なものがいいなと思って。お手入れ方法はきちんと伝えるし、使用感が気になってきたら僕が手入れすることもできる。同じように消費するならば、浪費にならない消費がいい。使い捨てにならず、長くそばに置いてもらえるような作品をつくっていきたい」。

作業場でていねいにやすりをかけるMONchさん。

作業場でていねいにやすりをかけるMONchさん。

MONchさんはワークショップなどでも木に触れる、愛でる感覚を伝えている。「作品からメッセージを伝えることより、誰かの手に渡ったときに喜んでくれているのを見るのがうれしいし、楽しい」というMONchさんは、いつも周りの空気をほわっとさせてくれる人ーー。だからこそ作品とともに人柄に惚れるファンも多い。屋号の“WAGO Creation”の「和合」には、そんな彼の祈りにも似た想いが込められている。あらためてアトリエ内の作品を眺めると、そのひとつひとつがアトリエの庭先に咲く、雨上がりの凛としたサルスベリの花のように煌めいていた。

▼店舗情報

WAGO Creation(ワゴウ クリエイション)
鹿児島市宇宿6-38-10
TEL 050-7117-8873
営業時間 10:00~18:00
定休日 金曜
HP https://www.wagocreation.com
Instagram https://www.instagram.com/wagocreation/

取材・執筆
やましたよしみフリーランスの編集者・ライター。鹿児島県薩摩川内市在住。浜松市出身。
大学卒業後、IT関連企業を経て、出版社、編集プロダクションに勤務。
主に女性向けフリーペーパーや実用書、育児情報誌などを制作。
2011年、東京から鹿児島へ移住。2012年よりフリーランスとして活動している。
得意分野は、食と暮らし、アート。二児の母でもある。
■ブログ http://yamashitayoshimi.blogspot.jp

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