2021.04.08
【太陽ガスActions特別対談(後編)】太陽光パネルから考える、 未来のエネルギーと幸せな暮らし
南九州市川辺町にある廃校を再生した自然体験施設「リバーバンク森の学校」に太陽ガスが施工した太陽光パネルが設置されました。
そこで、同施設を運営する一般社団法人リバーバンクの代表理事 坂口修一郎さんをお迎えし、自然エネルギーや環境問題、未来の暮らしなどについて、弊社の及川斉志と対談形式でお話を伺いました。
——エネルギーや環境問題に興味をもったきっかけは何でしょうか。
坂口 2000年前後に、ミュージシャンとして野外フェスに出演したり、東京にあるライブハウスの運営に関わったりするなかで、楽しい時間の裏側で大量のゴミが出ることを目の当たりにしました。音楽業界がこんなにもゴミを出すということがショックで……。
それから少しずつ環境のことを考えるようになると、そりゃそうだよなということが多くありました。たとえば石油は、海外から輸入するために石油を燃やして運んでいます。それって、壮大なムダですよね。でも一方で、太陽光は世界中に無料で配られています。ぼくは専門家ではありませんが、水力や地熱にしても、循環しているエネルギーを活用するほうが理にかなっていると思うようになりました。
——あらためて、再生可能エネルギーについて教えてください。
及川 再生可能エネルギーとは、枯渇が心配される石油や石炭といった化石燃料などとは異なり、繰り返し利用できるエネルギー全般のことを言います。自然エネルギーと呼ばれることもあり、太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなどがそれに当たります。
いま世界ではすごい勢いで変化が起きていて、再生可能エネルギーの分野でヨーロッパは日本の10年先を進んでいます。たとえば、日本ではまだまだ普及していない電気自動車がスタンダートになってきています。
しかし日本でも2012年から固定価格買取制度(FIT制度)がスタートしていますし、菅総理も昨年の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに」と宣言しているので、今後はそうした社会に向かっていくと予測されます。
坂口 でも再生可能エネルギーの話は、単純に電気自動車にすればいいということではないですよね。ぼくは10年以上ハイブリッドカーに乗っていますが、乗り換えを考えるといろいろな疑問が出てきます。たしかに電気自動車なら走行中のCO2排出量を減らせますが、動力になる電気が石炭火力でつくられていれば意味がありません。暮らしている地域によっては、燃費の良いガソリン車のほうがいいのではないかと考えてしまいます。
最適だと感じるものは一人ひとり違うので、自分の暮らしに合っていて、環境へのインパクトが小さく、もっとも嘘のないあり方をみんなが考え続けなければいけないと思います。
及川 現在と5年後で状況は全く違うものになっているので、何が最適なのかも変わってきます。だからこそ最新の情報を持っておかないと、良かれと思っていたことが実は時代遅れになっていて、環境に負荷を与えていたということになりかねません。
坂口 原発が問題になっているのも、40年前の考えを引きずっているからだと思います。当時は原発がいいと考えられたけれど、現代には合わないという話ですよね。もちろん他のエネルギーも、現在の常識が数年後には非常識になってしまうかもしれないので、常に更新していく姿勢が大事だと思います。
小さな主語で、一人ひとりが考え続けていく
及川 エネルギーの問題と気候変動は、人間の生存につながっていくことなので、きちんと考える必要があります。そのためにも、私たちがどういう社会で生きていきたいか、どういう地球を残したいかといったことを話し合うのが大切だと思います。
たとえば自然エネルギーを効率的に活用できれば、燃料費として海外に出ていたお金が国内に回ります。しかも自然エネルギーは都市部ではなく地方部に多いので、地方経済にとって大きなメリットになります。
しかし、広大な土地を切り開いてメガソーラー発電所をつくったり、巨大な洋上風力発電を誘致したりすると、かえって環境に負荷を与える可能性や景観を破壊することも考えられます。エネルギー問題の解決としては正しいのかもしれませんが、果たしてそれは、地域の幸せにつながるのでしょうか。
現在正しいことと10年後に正しいことは違って当然ですし、いろいろな考え方があっていいと思います。だから大事なのは、一人ひとりが考え続けること。それが嘘を減らすことにつながるのではないかと思います。
坂口 「環境問題」と聞くと、話が大きすぎてどこから手をつけていいのか分からないし、自分一人が取り組んでも意味がないと思ってしまいがちです。だからぼくは、小さい主語で考えることが大事だと思っています。「国が」「世界が」と考えてしまうとスーパーマンの仕事のように感じるけれど、「私が」「一人が」インパクトを最小限にすればいいと考えれば身近になります。
太陽光パネルの設置にしても、製造時にCO2を排出しているという意見がありますし、それぞれの家庭の経済事情があるので一概に最適とは言えません。けれど、全部はできなくても、少しでも減らせればいいと思うんです。そうして小さい主語が広がっていけば、最終的には大きなものなっていくはずですから。
——最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
坂口 今年の秋に、リバーバンク森の学校でグッドネイバーズ・ジャンボリー※を開催したいと考えています。そこで太陽光パネルのことを話して、その存在を知っていただきたいですね。伝えないと、屋根の上にあるので気付いてもらえないかもしれない(笑)。
及川 そうですね(笑)。施設のモニターを通じて、いま何キロワット発電していて、何キロワット使用しているのかが確認できるので、それを見ていただけると実感がもてるかもしれません。自然にあるエネルギーを利用することで、より豊かな暮らしを送れるのではないか。そんなことを少しでも考えていただけたらありがたいですね。
でもまずは一度、リバーバンク森の学校に遊びにいらしてください。すてきな校舎や森があって雰囲気がとてもいいので、訪れるだけで健やかな気持ちになれると思います。
坂口 現代の社会は、都市と自然が分断されているような気がします。「自然」と言われるとどこか遠くにあるような感じがしますが、そもそも太陽光は自然です。それを自然と感じられないことは、とても不自然ですよね。ぼくらは完全に自然の中にいて、自然の一部。雨が降れば気分が落ちたりするし、晴れれば気分が上がったりするのは、その証拠だと思います。
リバーバンク森の学校に太陽光パネルを設置したことで、ぼくもあらためてそう感じるようになりました。太陽光パネルはそうした感覚を数値化して教えてくれますし、その発電がどのくらい生活に役立つかを気付かせてくれる装置です。環境やエネルギー、そして暮らしのことを考えるきっかけになってくれたらうれしいですね。
※グッドネイバーズ・ジャンボリー:坂口さんが2010年から主宰している野外フェスティバル。「みんなでつくる文化祭」をテーマに、さまざまな音楽ライブやワークショップを実施しています。
BAGN, Inc.代表
一般社団法人リバーバンク代表理事
Mammoth, Inc.代表 CLO(Chief Learning Officer)
1971年鹿児島生まれ。音楽家として活動する一方、野外フェスティバル〈グッドネイバーズ・ジャンボリー〉を主宰。東京と鹿児島の二つの拠点を中心に、日本各地でオープンスペースの空間プロデュースやイベント、フェスティバルなど、ジャンルや地域を越境しながら数多くのプロジェクトを手掛けている。
及川 斉志2012年入社 新エネルギー推進チーム
みずいろ電力取締役
北海道大学理学部、ドイツフライブルク大学森林環境学部卒業。再生可能エネルギーの普及を目指して、これまでに鹿児島県内12カ所の自然エネルギー発電所建設に携わる。これからのライフスタイルに合った電気を考える『未来電気研究所』も好評連載中!https://taiyo-gas.or.jp/cms/k-cat/e-lab/