2019.09.01
第50回 大草原の青い空3
7ヶ月間の放浪の旅で私が周ったのは、中国(天津、北京)→モンゴル→中国(ウイグル地区、雲南)→ベトナム→カンボジア→タイでした。もう20年も前のことで、記憶があいまいなところもあるのですが、思い出に残っていることの一つは、タクラマカン砂漠を横断したことです。携えていった旅の教科書「地球の歩き方」にも載っていないルートで、現地人に聞いても「分らない。あそこまでだったらバスがあるよ。」という程度の答えしか返ってきませんでした。そこをあえて挑戦しようと思ったのはなぜだろう?と思い返してみると、旅行本にも載っていない、観光客もあまりいない、素敵な場所に行ってみたかった、そこで現地の人と素で触れ合いたいと思ったのでしょうか。時間はあったので、「行ける所まで行ってみよう」と西から東へ向かいました。不安と連れ添ってジープで山越え+山小屋で宿泊ということもありました。「とりあえず先に進んで情報収集」を繰り返し、無事横断することが出来ました。 もうひとつ思い出に残っていることと言えば、カンボジアの川での経験です。川といっても生ゴミとかビニールなどが浮いているような川で、にごった色の水がゆっくりと流れていました。その川の中でこども達が泳いで遊んでいるのです。彼らにとっては「普段」からしている「普通」のことだったのでしょうが、日本から来た私には衝撃でした。まずは、「こんな汚い所で泳ぐなんて!」という驚きと、「河川の汚染がひどいから生態系・人に良くないな」という悲しみ、遊んでるこどもたちを見ると「楽しそうだな」、でも「かわいそうだな」というような感情で、ちょっとわけのわからなくなっていたのだと思います。それで自分がとった行動は「一緒に泳ごう」と思い、持っていた赤ふんをはいて(はいていたのかも知れません)、そのどぶ川に飛び込みました。全く論理的な理由からではなく、衝動的な行動だったと思います。あの光景はもちろん忘れてはいませんが、一生忘れないでしょう。このことを思い出すと、「あのこどもたちや川が、そして自分も、豊かで幸せに生きられる地球がいいな、そのために自分も何かしたいな」と心のそこから思います。
10月号へ続く