2020.10.01
第63回 ウミガメと巨大風力②
吹上のウミガメと巨大風力事業について前回書きましたが、今回は別の視点から見てみようと思います。この吹上浜沖に計画されている洋上風力は着床式と、浮体式約100本の風車群で合計約1,000MWの出力を想定しているとのこと。設備利用率を30%と仮定すると年間約2,630,000MWhもの発電をすることになります。これは一般家庭66万世帯ほどの年間発電量になります。鹿児島県内には73万世帯ありますので、その約9割にあたる計算です。これだけ高出力な発電所からの電力は電圧の高い送電線で都市部の大消費地に送られます。一極集中型の電気生産工場で、地域分散型の地産地消とは呼べません。風力単体では災害時に使える電源というわけでもありません。 ではメリットは?というと、自然エネルギーですのでCO2が削減されて、気候変動対策には大きな貢献をしてくれることになります(浮体式は着床式と比べてCO2排出量が約4倍※1)。地元には工事費の一部(とメンテナンス費の一部)のお金が落ちてくることになるとおもいます。固定資産税も市町村に入ることになります。但し、本社が地域外となると、事業のメリットの大半は風力発電所が建設される地域外に出ていくことになります。出資・投資も地域外からが多ければ、そのリターンはもちろん地域外に流出することになります。 (※1電力中央研究所報告資料より)
11月号へ続く
風力発電のイメージ写真
─文:新エネルギー推進チーム 及川